PHCbi

CASE STUDIES 導入事例

フィレンツェ大学 フィレンツェ市〔イタリア〕

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がんの代謝研究で新たな可能性を探る

イタリアのフィレンツェ大学(英語表記:The University of Florence)は、医学、生命医科学、臨床科学関連の革新的研究で、確かな業績を挙げています。この研究所の中でも特に、活発な研究グループを擁して高い評価を受けている分野の一つが、がんの代謝研究です。

ルイージ・イッポリト(Luigi Ippolito)博士は、フィレンツェ大学の研究者で、この新しい分野を専門としています。この分野はがんの検出や治療に関する新規手法の発見に役立つ可能性があります。PHCbiのLiCellMoのような新しい装置が、こうした重要な研究をどのように支援することができるのか、イッポリト博士にご説明頂きました。

フィレンツェ大学

がんに関連した代謝リプログラミングは、細胞内と細胞外の代謝物の変化を引き起こします。さらに、がんを直接治療するだけでなく、がんの種類の特定と分類にもつながります。それぞれの腫瘍は特有の代謝特性を示します。イッポリト博士は、フィレンツェ大学のパオラ・キアルージ(Paola Chiarugi)教授の研究室で複数のがんの代謝研究プロジェクトに取り組み、この分野の研究の最前線に立っています。
現在イッポリト博士は、特に腫瘍微小環境(tumormicroenvironment:TME)で発生する代謝相互作用に焦点を当てた研究を行っています。

「私の研究は主に、前立腺がんの進行と前立腺がんに関連する代謝の変化に焦点を当てています。」とイッポリト博士は述べています。「私たちは原発巣における間質細胞と前立腺がん細胞の間における代謝の相互作用について調べています。前立腺がんの進行とともに乳酸の濃度が上昇することが明らかになっていることから、私たちは乳酸の研究を行っています。前立腺がん細胞は乳酸を利用することで悪性度が高まります。」

主な代謝物

乳酸は、がんの代謝において大量にみられるがん代謝物(オンコメタボライト)です。前立腺がんでは、がん関連線維芽細胞 (CAFs)が乳酸を分泌する主な供給源となっており、がん細胞は乳酸を取り込んでミトコンドリア代謝を維持します。しかし、他の多くの要因(例えば、乳酸が腫瘍の転写制御にどのような影響を与えるか、など)は、まだ完全には解明されていません。

「前立腺がんにおいて、乳酸は脂質代謝の制御因子であるだけでなく、エピジェネティックドライバーでもあります。なぜなら、乳酸は前立腺がん細胞におけるヒストンをアセチル化(すなわち遺伝子発現の制御)し、がん細胞の転移の進行を転写から促進することにつながるためです。」とイッポリト博士は述べています。「私たちは数年前に初めて、Cancer Research誌で乳酸に関する論文を発表しました(PMID:35135811)。

また最近では、私たちは転移性ニッチと転移性がん微小環境に影響を与える代謝物についての研究を行っています」とイッポリト博士は続けます。「私たちの目標は、臓器特異的な代謝物とそれが前立腺がんの転移に与える影響を解明することです。また私たちは、マウスやヒトのモデルで、肺や骨などの組織における代謝物の濃度測定も行っています。」

「がんの代謝に関する分野では、解糖系の分野の新たな知見によって革命が起きました」とイッポリト博士は続けます。「そのため、私たちの研究では、グルコースと乳酸の測定が極めて重要です。例えば解糖系の活性状態は、治療や間質細胞との相互作用によって変化する可能性があるからです。また、腫瘍の環境では他の反応が見られることもあります。グルコースと乳酸の測定は、最初のアイデアを与えてくれる重要なものです。」

充実した設備を持つ施設

フィレンツェ大学には、代謝分析に必要な設備(GC-MS、LC-MS、Seahorseリアルタイムセルアナライザー、その他、ミトコンドリア代謝解析システム・細胞フラックスアナライザーOROBOROS O2kなど特別な装置)が整った大規模な施設があります。以前は、グルコースと乳酸は、まず市販のキットを使って測り、その後質量分析計で測定していました。

「LiCellMoは、特に乳酸測定において、私たちの実験条件の信頼性を高めてくれるでしょう。」

しかし今、PHCbi の新しいLiCellMoを使用すると、多くの利点があります。例えば、グルコースと乳酸の詳細な連続測定データをリアルタイムでモニタリングしながら数日分の記録を得られることなどです。

「腫瘍細胞内で起こり得る変化を理解するためには、これら2つのパラメータを数日間にわたりリアルタイムで測定することが適切です。これは短期と長期の分析の両方に大きな影響を与えます。」とイッポリト博士は述べています。「これは、私たちのモデルで代謝あるいは代謝以外への薬物ターゲティングの有効性を検討する際に役立つ可能性があり、マウスモデルに移行する際にも役立つと考えられます。たとえば、マウスにおいて腫瘍の代謝標識の測定は、腫瘍が生着してから数日後に行うことができます。また、長時間経過後も、以前のin vitro の条件で観察された変化と比較するために、繰り返すことができます。」

「LiCellMoライブセル代謝分析装置は非常に使いやすい装置です。取り扱いはとても簡単です。特に、プレートへの細胞播種の準備段階が簡便です。」とイッポリト博士は付け加えました。「この装置は自律的で単純明快です。」

貴重なデータ

イッポリト博士の研究チームでは、LiCellMoのデータ品質、感度、解像度、精度の優位性を認識しています。

「LiCellMoライブセル代謝分析装置は非常に使いやすい装置です。取り扱いはとても簡単です。特にプレートへの細胞播種の準備段階が簡便です

「データには自信を持っています。この装置とソフトウェアから得られるデータは非常に優れたもので、生データでも非常によく説明されています。また、生データはCSV形式なので、全てのユーザーにとって使いやすいものになっています。ソフトウェアから得られるデータは、規格化した後でも非常に信頼性が高く、色やグラフの点でも有用性が高いものになっています。こうしたデータは非常に信頼できると考えています。」とイッポリト博士は述べています。「特に乳酸の測定に関して、私たちの実験条件の信頼性は、この装置によってさらに高まると思います。また、数日間連続測定する機能を私たちの実験条件に組み込んで、細胞モデルにおける中間的な解糖系のパラメータの測定を行うこともできると思います。」

コンパクトな研究パートナー

イッポリト博士は、LiCellMoが採用している24ウェルプレートの利便性が非常に高いと感じています。

「24ウェルプレートはウェルの数が多く、さまざまな条件に使用できるため、私の実験条件に合っています」とイッポリト博士は述べています。「この装置の大きさが気に入っています。この装置はとても小さいです。LiCellMoの専有スペースはごくわずかで、私たちの研究室では問題になりません。この装置は細胞培養室に置くこともできます。LiCellMoがあれば、専用のインキュベーターは必要ありません。」

イッポリト博士の部門では、LiCellMoはコンパクトな研究パートナーとして認められつつあります。

インフォメーション

PHC株式会社 バイオメディカ事業部

https://www.phchd.com/jp/biomedical/live-cell-metabolic-analyzer

LiCellMo ライブセル代謝分析装置


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