目次
承継開業と新規開業の違いとは?
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クリニックを開業する方法は、ゼロからすべてを準備して立ち上げる「新規開業」と、既存のクリニックを引き継ぐ「承継開業」に分けられます。同じ開業でありながら中身が異なるため、以下で詳しく解説します。
承継開業の特徴
承継開業は既存のクリニックを承継して開業する方法です。建物や医療機器、スタッフ、そして通院中の患者さんを引き継いで新たに経営を開始します。
最大の特徴は、開業初月から安定した患者数と診療報酬を確保できる可能性が高い点です。一般的に、承継開業では前院長先生が築いた患者さんを引き継げるため、開業直後からある程度の収入が見込めます。
ただし、既存の設備や人間関係をそのまま引き継ぐため、自分の理想とする診療方針との調整が必要になる場合があります。とくに、スタッフとの関係性はクリニック運用の根幹です。良好なコミュニケーションを築けるかどうか、計画性をもって取り組むべきポイントといえます。
新規開業の特徴
新規開業はすべてをゼロから立ち上げる開業方法です。立地選定・内外装設計・医療機器導入・スタッフ採用まで、全工程をご自身の理想に合わせて進められます。
クリニックのコンセプトから診療方針まで自由に設計できる分、開業準備期間は1年~1年半程度要します。また、開業後も患者数が安定するまで数か月、黒字化まで年単位を想定した計画が必要です。
長期的な視点で「自分のクリニック像を実現させたい」と考える方に向いている開業方法といえるでしょう。
承継開業のメリット・デメリット
承継開業を選ぶべきかどうかは、メリットとデメリットの両方を把握し比較する必要があります。具体的にはそれぞれ以下のような内容が挙げられます。
【メリット】
- 開業準備の時間と労力を節約できる
- 開業に必要な初期費用をおさえられる
- 通院中の患者さんを引き継げる
- 早期の黒字化が見込める
- 収支の見通しが立てやすい
- 業務に慣れたスタッフがいるため、運営に関するトラブルが少ない
- 地域での認知度があるため、宣伝活動が最小限で済む
- 設計に関する内容を省略できるため、検討事項を減らせる
- 前院長先生とともに地域の関係者や医師会へのあいさつ回りができるなど、地域内の関係が築きやすい
【デメリット】
- 患者層や年齢層が偏っている場合(後期高齢者など)、新規開業と同等に集患に注力する必要がある
- 人件費が高く設定されている場合がある
- スタッフに気を使い業務オペレーションを変えることが難しい場合がある(とくに電子カルテ等新しいシステムの導入など)
- 院長先生交代後もスタッフや患者さんに安心(定着)してもらうために、数か月の時間軸で前院長先生と連携して引継計画を進める必要がある
- 建物の老朽化問題がある場合、多額の修繕費用(または移転費)が掛かる
より詳しい内容は、以下の記事で深堀しています。
参考記事:医院継承(医院承継・継承開業)の基本から流れ、失敗しないポイントを解説
また、承継開業に関する情報をまとめたお役立ち資料もご用意しているため、手元資料としてご活用ください。
お役立ち資料の無料ダウンロードはこちらから:医院承継とは?メリットデメリットと進め方
承継開業の手続き
承継開業の手続きは、承継するクリニックが個人経営か医療法人かによって大きく異なります。個人クリニックの場合は主に行政機関への届出が中心となり、手続きは比較的シンプルです。一方、医療法人の場合は法人の定款変更や役員変更など、複雑な法的手続きが必要となります。
以下では、それぞれのケースで必要な手続きについて解説します。
個人クリニックを承継する場合
個人クリニックの承継では、主に保健所への開設届・厚生局への保険医療機関の指定申請・労働基準監督署への労災保険医療機関指定申請などが必要です。手続きの概要は以下のとおりです。
| 届出先 | 必要書類例 |
|---|---|
| 保健所 |
・ 診療所開設届 ・ 臨床研修等修了登録証 ・ 履歴書など |
| 厚生局 |
・ 保険医療機関指定申請書 ・ 保険医登録票の写しなど |
| 労働基準監督署 |
・ 労災保険医療機関指定申請書 ・ 適用事業報告書など |
法人クリニックを承継する場合
医療法人の承継では、法人間の契約締結から法的手続きまで多岐にわたる対応が必要です。手続きの一例を以下に示します。
【契約関係の締結】
- 経営引継契約書の締結
- 出資持分譲渡契約書(出資持分のある医療法人の場合)
- 資産譲渡契約書
- 不動産売買契約書および所有権移転登記(建物・土地譲渡の場合)
- 不動産賃貸借契約書(建物・土地賃貸の場合)
【法人変更手続き】
- 定款変更認可申請
- 法人変更登記申請および法人印の改印届
- 役員および社員の変更手続き
- 理事長変更の登記申請
- 登記完了届の提出
【開設関連手続き】
- 新診療所の開設許可申請
- 旧診療所の廃止届および新診療所の開設届
医療法人承継の詳細な手続きやメリット・デメリットについては、以下の記事で解説しています。要件や検討のタイミングについても触れているため、検討時の参考になさってください。
参考記事:医療法人とは?メリットや社団・財団の違いを解説
新規開業のメリット・デメリット
新規開業はすべてを自由度の高いメリットがある反面、対策と準備が必要なデメリットもあります。以下の内容を踏まえ、ご自身に適しているかの参考になさってください。
【メリット】
- 診療圏を自由に選択できる
- 多くの開業物件/用地の中から、土地やテナント等の物件を選択できる
- 外装や内装(間取り含む)を自身の理想通りに設計できる
- 人材や卸など付き合う業者の選定を一から行える
- 医療機器やシステム等(とくに電子カルテ)を自身の意向に沿って導入できる
【デメリット】
- 初期費用が多く掛かる(在宅利用の場合は抑制が可能)
- 開業後の収支の予測が立てにくい
- 最初の診療報酬が入るまで、収入が無い期間がある(最低2か月)
- 医院を黒字化するまでに数年の時間が掛かる
- 開業に向けた検討事項や、人や業者、物など選定するものが多く開業準備に時間と労力が掛かる
メリット・デメリットを踏まえた判断軸について、以下の記事でも解説しています。あわせてご覧ください。
参考記事:クリニック開業はメリットだけではない。デメリットも直視せよ
新規開業の手続き
新規開業では市場調査から内覧会実施まで、多岐にわたる手続きを順に進める必要があります。主な流れは以下のとおりです。
- 開業地選定
- 開業形態選定
- 診療圏分析
- 診療方針作成
- 事業計画作成
- 開業資金準備
- 内外装設計・施工
- 求人募集
- 各種手続き
新規開業の詳細な手続きとポイントについては、お役立ち資料で解説していますので、ぜひご活用ください。
ダウンロードはこちらから:クリニック開業の3大プロセスと成功へ導く7つのポイント
自身に合った開業方法のチェックリスト
承継開業と新規開業のどちらが適しているかを判断する材料として、以下のチェックリストをご活用ください。各項目についてご自身の状況と照らし合わせることで、最適な開業方法の確認ができます。

チェック結果で承継開業に該当する項目が多い場合は承継開業を、新規開業に該当する項目が多い場合は新規開業を検討する価値が高いといえます。ただし、最終的には総合的な状況と情報を考慮した判断が重要です。
まとめ
承継開業は初期投資をおさえて短期間で安定経営を実現できる一方、新規開業は理想のクリニックを自由に設計できる魅力があります。重要なのはご自身の資金状況や時間的制約、理想とする診療方針を明確にし、適した開業方法を選択することです。
ウィーメックスが運営しているメディコムパークでは、開業に関する情報のご提供やご相談を承っております。今回の記事からもう一歩具体的に進める際には、以下の内容もご活用ください。
承継に関する情報をまとめたページはこちらから:「医業承継」、何から始めたら?
物件情報を検索できるページはこちらから:開業医向け物件紹介
承継に関するお問い合わせはこちらから:新規開業・事業承継・M&A等に関するお問い合わせ
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