目次
ベースアップ評価料の全体像
ベースアップ評価料は、医療現場での人材確保や定着促進を図るため、医療関係職種の賃金改善を目的とする診療報酬です。
本点数は、医療機関の規模や種類ごとに分類されています。
- 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)
- 外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)
- 入院ベースアップ評価料
- 訪問看護ベースアップ評価料
なお、2025年度の補正予算事業における医療従事者の賃上げ支援策の引継ぎ先にも位置づけられており、継続的な賃上げを支える制度といえます。補正予算を含めた賃上げの詳細については関連記事でも解説しているため、参考になさってください。
2026年度のベースアップ評価料の中身を解説
2026年度診療報酬改定のベースアップ評価料では、対象職種の拡大がメイントピックといえます。2024年度改定では対象外となっていた事務職員や40歳未満の勤務医師などもベースアップ評価料の枠組みに統合される方針です。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第641回)賃上げについて(その2) P20」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631270.pdf)
また、外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)では実績に応じた評価の導入も予定されており、継続的に賃上げを実施している医療機関と、新たに取り組む医療機関で評価点数に差が設けられる見込みです。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第641回)賃上げについて(その2) P23」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631270.pdf)
算定に必要な準備すべき内容を紹介
ベースアップ評価料を算定するには、事前の準備が必要です。以下3つの内容の確認から始めましょう。
| 準備内容 | 詳細 |
|---|---|
| 対象職種の把握 | 看護師や事務職員など、算定対象となる職種の所属状況を正確に把握する |
| 算定実績の確認 | 直近1か月間の初診・再診・訪問診療の算定回数を把握できる環境を整える |
| 賃金改善計画の作成 | ベースアップ評価料によって得られる加算収益をどの職種にどの程度分配するか、基本給や手当の引き上げ計画を立てる |
具体的な手順について、シミュレーションを交えながら解説したセミナーもご用意しております。最初のアクションの1つとして参考になさってください。
セミナー視聴はこちらから:医療従事者の賃上げ、どう進めたら?実際に計算、申請してみよう
ベースアップ評価料の届出方法
ベースアップ評価料の届出は、それほど複雑ではありません。2024年度改定時は、以下のように3ステップで完了する資料が厚生労働省から公表されました。
出典:厚生労働省「ベースアップ評価料の届出書類の書き方~医科編~2025年1月版 P3」(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001381327.pdf)
それぞれのステップについて、中身をまとめたものが以下の表です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 届出に関する基本事項の記載 |
|
| 2. 直近1か月間の実績入力 |
|
| 3. 1か月あたりの賃金改善見込み額等の入力 |
|
出典:厚生労働省「ベースアップ評価料の届出書類の書き方~医科編~2025年1月版 P5~7より抜粋して記載」(https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001381327.pdf)
なお、届出様式は2025年3月31日付で改定され、記載しやすくなりました。さらに2026年度は、負担を軽減する目的から項目が削減される方向で整理が進んでいます。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第641回)賃上げについて(その2) P35」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631270.pdf)
2026年度以降予定されている算定スケジュール
2026年度のベースアップ評価料に関するスケジュールは、以下のように予定されています。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第641回)賃上げについて(その2) P36」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001631270.pdf)
届出後の流れとして、2026年6月末までに申請し、8月に中間報告書を提出するスケジュールが想定されています。年度ごとの報告サイクルを踏まえると、計画的な賃金改善の実施と記録の保管が求められるでしょう。
詳細なスケジュールは追って公表されるため、厚生労働省のWebサイトを定期的に確認し、波に乗る準備を今から始めても遅くありません。
ベースアップ評価料の基本事項
ベースアップ評価料の算定にあたり、おさえておくべき基本事項があります。4つのポイントとしてまとめたため、参考になさってください。
| 基本事項のポイント | 内容 |
|---|---|
| 賃金改善の定義 | ベースアップとは、基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げを指し、定期昇給は含まれない |
| 使途 | 算定した評価料による賃金改善額の3分の2以上は、基本給等の引き上げに充てるよう制限されている |
| 対象職種 | 2026年度からは40歳未満の勤務医や事務職員も追加されなど、幅広い職種が対象 |
| 算定タイミング | 初診時・再診時・訪問診療時となっており、各診療報酬に一定点数が上乗せされる |
ベースアップ評価料は、医療機関の賃金改善を支える診療報酬の1つです。算定をきっかけに、持続可能な賃金改善の仕組みを構築しましょう。
算定により得られるメリット
ベースアップ評価料を算定すれば、複数のメリットが得られます。人材確保の観点から見ても、賃上げを実現できる仕組みとして有効です。
雇用環境を改善できる
給与水準を引き上げられるため、他産業との人材獲得競争に対応する土壌を整えられます。近年、医療業界では人材の流出が課題になっており、とくに看護師や薬剤師といった専門職の確保が難しくなっている状況です。
ベースアップ評価料を活用すれば、基本給や手当を確実に引き上げられるため、スタッフの離職防止に役立ちます。継続的な賃上げは職員のモチベーション向上にも寄与し、医療サービスの質の向上にもつながります。雇用の安定化により、スタッフの定着率が向上すれば、教育コストの削減や業務効率の改善も見込めるでしょう。
また、求人活動においても「賃上げ実績のある医療機関」の訴求力が高まり、質の高い人材の確保の有効な一手といえます。
新しく算定できる項目が増える
2026年度改定では、これまで対象外だった事務職員や40歳未満の勤務医などの賃上げ分も評価の対象として統合される予定です。つまり、自院で算定できる項目を増やしやすくなったと読み取れます。
多くの保険医療機関は診療単価を増加できるかどうかが、生命線です。算定項目が増えれば経営戦略面での選択肢も広がり、改善サイクルを回しやすくなるでしょう。
算事前に確認しておきたいデメリット
ベースアップ評価料にはメリットがある一方で、算定にあたり注意すべき点もあります。事前に確認しておけば、適切な打ち手につながります。
算定前の手間がかかる
届出書添付書類や賃金改善計画書の作成には、人事労務に関する正確な情報の整理が求められます。
初めて届出を行う医療機関では制度の理解に時間がかかり、書類作成に慣れるまで試行錯誤が必要になるかもしれません。通常業務と並行する期間は、届出作業によりタスクを圧迫するリスクになり得ます。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)であれば比較的事務負担が小さく、簡素化様式も用意されているため、まずは(Ⅰ)の届出様式確認から始めてみるとよいでしょう。
算定後も定期的な報告が必要
算定を開始した後も実績報告書を作成し、適切に賃金改善が図られたかを報告する義務が生じます。
賃金改善実績報告書では、対象職員への賃金改善の実施状況を詳細に記載する必要があり、給与明細や就業規則の改定記録などの根拠資料を保管しておく必要があります。
2026年度からは、8月頃に賃上げ状況の中間報告を求める案も出ており、年度途中での進捗管理も必要になる見込みです。報告を怠ると算定要件を満たさなくなるリスクがあるため、継続的な管理体制の構築が求められます。
長期的な運用を見据えた体制整備が求められるため、担当者の異動や退職があっても対応できるよう、業務マニュアルの整備や複数名での情報共有が推奨されます。
算定を見送る場合に知っておくべきこと
ベースアップ評価料の算定を検討した結果、見送るケースもあるでしょう。しかし、算定しない医療機関では賃上げの財源を自力で確保する必要があります。
また、競合の医療機関が算定して賃上げを実施すれば相対的に自院の給与水準が低下し、人材流出のリスクが高まります。地域内で給与格差が生じると、優秀な人材の確保が困難になるのは想像に難しくありません。
さらに、2026年度改定では算定実績に応じた評価が導入されるため、早期に算定を開始した医療機関との差が拡大する可能性もあります。
ベースアップ評価料は、2025年の補正予算の1つ「医療分野における賃上げ・物価上昇に対する支援」を引き継ぐ診療報酬です。従来よりも算定への負担が軽減されている点は、見送る前に検討する価値はあると考えられます。
ベースアップ評価料に関するよくある質問
ここでは、ベースアップ評価料に関する質問と回答をまとめました。算定を検討する際の参考になさってください。
提出した次月から算定できる?
届出を受理した日の翌月1日から算定可能です。たとえば、2月に届出を行った場合、3月1日から算定を開始できます。
なお、届出は書類の不備がないことが前提です。記載内容に不備があると、差し戻しとなり算定開始が遅れるため、事前に記載例や注意事項を確認し、正確に記入しましょう。
支払賃金よりも算定金額(収入)が上回った場合の対応は?
ベースアップ評価料による収入が当初の予定額を上回った場合、ボーナスや臨時手当の支給などでの対応が可能です。
基本給や毎月支払われる手当への充当が基本ですが、予想を超えて算定額が増加した場合は、賞与での配分や翌年度への繰り越しなど、柔軟な運用ができるでしょう。
なお、実績報告では算定額と実際の賃金改善額の整合性が確認されるため、適切な記録管理が求められる点は忘れてはならないポイントです。
開業時から算定できる?
開業時からベースアップ評価料を算定するには、最低1か月の給与支払い実績が必要です。よって、新規開業の医療機関では開業初月から直ちに算定はできません。
ベースアップ評価料は「賃金改善」を目的とした制度であり、基準となる給与実績が必要なためです。たとえば4月に開業した場合、4月分の給与支払いが完了後5月以降に届出を行い、受理された翌月から算定を開始できます。
算定体制をサポートするシステムの紹介
ベースアップ評価料の算定や実績報告には、正確なデータ管理が欠かせません。電子カルテやレセプトコンピュータなどのシステムを活用すれば、算定実績の集計から報告書作成までの事務負担を軽減できます。
ウィーメックスは、1972年に日本初のレセプトコンピュータを発売以降、医療機関の事務負担となる部分をサポートしてきました。たとえば、完全クラウド型電子カルテの「Medicom クラウドカルテ」では、最新の制度改正に対応したアップデートが自動で適用されるため、常に正確な計算が可能です。
算定開始後の継続的な管理を見据えて、システムの導入や見直しを検討してみてはいかがでしょうか。
製品一覧はこちらから:クリニック向け製品一覧
製品比較はこちらから:メディコムがご提案する失敗しない電子カルテの選び方
導入事例はこちらから:導入事例
まとめ|算定は計画的に
ベースアップ評価料は、医療従事者の賃上げを実現するための制度です。2026年度改定では対象職種の拡大や実績に応じた評価の導入が予定されており、より活用しやすい仕組みへと進化する見込みです。
算定には事前の準備や継続的な実績報告が必要ですが、人材確保や雇用環境の改善につながります。算定しない場合は賃上げ原資の確保が難しくなり、他院との給与格差により人材流出のリスクも高まるでしょう。まずは外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)の算定に向け、自院に合った運用方法を見極めてみてはいかがでしょうか。
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