目次
標準型電子カルテの現状と今後の予定
まず「標準型電子カルテ」とはどのようなものなのか、情報を整理してお伝えします。国としては、全国の医療機関が同一の情報基盤を利用できる環境(全国医療情報プラットフォーム)を目指しています。
出典:厚生労働省「全国医療情報プラットフォームの概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001332014.pdf)
その点を踏まえ、標準型電子カルテの状況をみていきましょう。
α版に搭載されている機能
標準型電子カルテのα版は2025年3月からモデル事業がスタートしており、電子カルテ未導入の医科診療所を対象に開発が進んでいます。
α版に搭載されている機能は以下資料のとおりです。
出典:厚生労働省「第3回標準型電子カルテ検討ワーキンググループ資料 P13・14」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001392965.pdf)
なお、α版は紙カルテで運用している医師からの要望を踏まえ、紙カルテとの併用もできるように機能が絞られています。電子カルテメーカーが提供している電子カルテシステムと比較すると、レセコン機能の充実度や使いやすさの面で制約があります。導入を検討する際には、自院の運用にフィットするかどうかを確認しましょう。
モデル事業の進行状況
標準型電子カルテα版のモデル事業は2026年度まで延長され、並行して開発・改良が進められる予定です。
出典:厚生労働省「電子カルテの普及について P5」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001608407.pdf)
今後のスケジュール
標準型電子カルテは2026年度中の完成を目指し、検討が進んでいます。「2030年までに電子カルテ普及率100%」が国の目標として設定されたことから、2026年度より普及に向けた具体的アクションがあると予想されます。
出典:厚生労働省「電子カルテの普及について P6」(https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001608407.pdf)
電子カルテの情報が標準化される理由
標準型電子カルテをはじめ「情報の標準化」が進められているのは、医療機関同士の情報連携の難しさにあります。電子カルテの普及とあわせて、医療機関ごとのカスタマイズも進められてきました。結果として、提供された医療情報が読み取れない、時間がかかるなどの不具合が生じ、患者さんの不利益につながるケースも少なくない状況です。
そこで「電子カルテ情報共有サービス」をはじめ、標準化による医療情報の共有化が推し進められています。
出典:厚生労働省「電子カルテ情報共有サービスの概要案内」(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001457777.pdf)
本サービスで以下3文書・6情報が標準化され、医療機関同士や患者さんとも共有できる環境構築が期待できます。
| 共有できる情報 | 内容 |
|---|---|
| 3文書 |
|
| 6情報 |
|
診療報酬上の評価項目にも挙げられていることから、早く動き出したほうが導入によるメリットは大きいといえるでしょう。
標準型電子カルテ(準拠含む)による3つのメリット
標準型電子カルテの導入により、従来型の個別カスタマイズされたシステムでは難しいメリットを享受できます。院内業務の効率化につながる部分でもあるため、1つずつみていきましょう。
1.院内外の情報共有がスムーズになる
従来の電子カルテシステムでは、ベンダーごとに異なるデータ形式を使用していたため、医療機関同士での情報交換や共有が困難なケースがありました。
標準型電子カルテでは、国際標準規格HL7 FHIR(エイチエルセブンファイアー)の採用によりデータの入出力形式が統一され、院内外問わず円滑な連携が可能になります。
たとえば、情報共有サービスの「3文書6情報」が効率的に共有されることで、診療の効率性が向上します。また、院内での検査実施時には、電子カルテから患者情報を検査システムに自動連携させることで、入力ミスの削減とシームレスな診療業務の実現が可能です。
さらに、薬局との処方情報共有や介護施設との連携においても、統一された形式での情報交換により、地域包括ケアシステムを後押しする機能も果たすでしょう。
2.システムの導入・移行がしやすくなる
データ形式が規格統一されていない場合、異なるベンダー間でのシステム接続に手間と費用がかかるほか、接続自体が不可能なケースもありました。
標準型電子カルテではデータの規格統一により、システム間の接続が大幅に簡素化され、導入やデータ移行がスムーズに進められるようになります。
とくに、旧システムから新システムへのデータコンバート作業は、コストと時間がかかる代表例です。標準化されたデータ形式であれば比較的短時間かつ低コストでの移行が見込めます。
3.より正確な問診が可能になる
患者さんの転院時に用いられている紙ベースの紹介状では、限られた情報しか共有できず、詳細な病歴や治療経過の把握が困難なケースもありました。
標準型電子カルテを使った電子データによる診療情報の授受により、問診に必要な時間や情報を整理する時間が効率化できます。また、患者さん自身の記憶に頼る必要がなくなるため、情報の欠落や誤りによる医療事故のリスク軽減も期待されます。
標準型電子カルテのデメリット
標準型電子カルテには多くのメリットがある一方で、導入や運用にあたって注意すべきデメリットも含まれます。想定される課題を事前に理解したうえで適切な対策を講じれば、導入の負担軽減も可能です。以下では、主なデメリットと対応策について解説します。
導入・運用コストがかかる
標準型電子カルテの導入には、低コストではあるものの一定のコストが生じます。現在電子カルテを利用している医療機関の場合、システム改修やデータ移行、システム連携などでコストが発生します。
また、標準型を契機に電子カルテを導入する医療機関では、電子カルテ情報共有サービスやオンライン資格確認利用などに必要な運用費用が新たなコストとなるでしょう。
コストの負担を軽減するためには補助金の活用が有効です。病院の場合は、電子カルテ情報共有サービス対応に必要な改修に対する補助金が用意されます。診療所であれば、IT導入補助金をはじめ選択肢は複数あります。以下の記事で内容をまとめているため、ご参照ください。
参考記事:【2025年】診療所の電子カルテ導入に使える補助金完全ガイド
操作方法に慣れるまで時間がかかる
標準型電子カルテを活用するためには、スタッフ全員が操作方法を習得する必要があります。とくに、紙カルテで業務を行ってきた高齢の医師やコンピューターに不慣れなスタッフにとっては、新しいシステムへの適応に相当な時間と労力が必要です。
課題を解決するには、導入前に十分な研修期間を設け、段階的にシステムに慣れていくスケジュールの立案と管理が有効です。
セキュリティ対策が必要になる
電子カルテには患者さんの個人情報や診療情報が大量に保存されているため、紙カルテ以上に厳格なセキュリティ対策が求められます。不正アクセスやウイルス感染により情報漏えいが発生した場合、患者さんのプライバシーが侵害されるだけでなく、医療機関の信頼失墜や法的責任を問われるリスクもあります。
具体的な対策として、アクセス権限の適切な設定・定期的なパスワード変更・ウイルス対策ソフトの導入・データのバックアップ体制構築などが必要です。また、スタッフに対するセキュリティ教育も欠かせません。
以下のセミナーでは、セキュリティに関する具体例を解説しているため、体制構築の参考になさってください。
セミナー視聴はこちらから(無料):クリニックが行うべき4つのセキュリティ対策
停電時・災害時に利用できなくなる可能性がある
電子カルテシステムは電力供給に依存しているため、停電や自然災害が発生した際にはシステムが停止し、診療業務に深刻な影響を与える可能性があります。とくに、サーバーやネットワーク機器が物理的に損傷を受けた場合、復旧までに長期間を要する場合もあります。
リスクを軽減するには、無停電電源装置(UPS)の設置やバックアップサーバーの構築などが有効です。ただし、対策にも限界があるため、緊急時には紙カルテでの診療継続が可能な体制と定期的な訓練で整備しておく必要があります。
標準型電子カルテと標準化対応の電子カルテの違い
国策として「標準型電子カルテ」と「標準化対応」の2本が走っていることから、あらためてどのような違いがあるのか、下表にまとめました。前提として優劣をつけるものではなく、違いを把握するための情報整理としてご参照ください。
| 項目例 | 標準型電子カルテ(国が開発) | 標準化対応電子カルテ(ベンダーが開発) |
|---|---|---|
| 機能 | 利用できる機能は限定的 | 一連の機能が利用可能 |
| 医事機能 |
|
|
| 会計後の流れ | カルテの内容確定後、レセコンへ情報を送信し会計完了 | カルテの内容確定と同時に会計まで完了 |
| 事務効率 | 患者情報登録などの二重管理の手間が生じる可能性 | 患者情報が1つで済むため転記ミスなどが少ない |
標準型電子カルテは、現在紙カルテで運用しているクリニックでも導入しやすいよう、紙との併用を見据えて機能を絞っています。一方の標準化対応電子カルテは、電子カルテ運用を基本にしており、機能も充実している製品がほとんどです。
どちらも医療DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、国策に対応する方法といえます。自院の現状と将来像から、どちらが運用するのに適しているかを検討するとよいでしょう。選定について開業医の声をもとにポイントを解説したお役立ち資料もご用意しています。あわせて参考になさってください。
資料のダウンロードはこちらから(無料):導入してわかった!開業医が語る、電子カルテ選びの“本音”
最後に、標準化対応電子カルテの例として「Medicom クラウドカルテ」をご紹介します。医事一体型かつAI自動算定機能を搭載しており、算定漏れ防止に貢献するシステムです。発売以降機能を拡充しており、使いやすい電子カルテとしてアップデートを重ねています。
▶製品の詳細はこちらから
標準型電子カルテに関してよくある質問
ここからは、標準型電子カルテに関する3つの質問を紹介・解説します。
標準型電子カルテはいつから始まる?
2025年からα版のモデル事業は始まっており、本格実施は2026年度が予定されています。具体的な日付については未定のため、定期的に動向をチェックされるとよいでしょう。
費用はどれくらい?
2026年3月時点で、具体的な費用は明らかになっていません。費用面が導入のハードルになっていることは、日本医師会の調査でも上位に挙がっており明確です。
出典:日本医師会「紙カルテ利用の診療所の電子化対応可能性に関する調査」(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20250806_2.pdf)
初期費用をおさえたクラウド型電子カルテ(クラウドネイティブ)として開発が進んでいるため、標準化対応電子カルテの費用が参考指標となるでしょう。
標準化に対応しないと何が問題になる?
情報連携の遅れから、周囲の医療機関とのやりとりが困難になる可能性があります。患者さんの利便性にも関わるため、患者数の減少につながってしまうかもしれません。
電子カルテ導入率100%や、カスタマイズ不可の方針など、国は医療DXの方針を明確化しています。選ばれ続けるためには、標準化対応が必須の時代に入ってきたと整理できます。
まとめ
電子カルテ情報の標準化は医療機関間の情報連携を強化し、より質の高い医療提供を実現する重要な取り組みです。2030年度までの全国普及を目指して国が推進しており、並行して診療報酬をはじめとする制度変更の動きが激化すると予想されます。
現在電子カルテ未導入の医療機関は、α版の完成を待つだけでなく、HL7 FHIRに対応した電子カルテメーカーの製品に関する情報収集も並行して進めると、制度に関する変化にもスムーズに対応できるでしょう。
まずは自院の現状と将来計画を整理し、適切な電子カルテの情報収集から始めてみてはいかがでしょうか。ウィーメックス株式会社のメディコムシリーズは標準化に対応しており、デジタル庁の標準型電子カルテ開発ワーキンググループにも参画しています。情報収集の一環として、以下製品ページもご覧ください。
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