PHCグループでは、気候変動対応と持続可能な成長の実現に向け、製品単位での環境負荷の可視化と外部認証の取得を推進しています。ライフサイエンス事業では、カーボンフットプリント(CFP)の算定からACT Ecolabel取得までを一体的に進めることで、顧客要求への対応力強化と製品価値の高度化を実現しました。
製品単体の性能だけでなく、原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体での環境負荷を把握・低減することが、顧客及び社会から求められています。特に製薬・研究分野では、Scope 3排出量の可視化ニーズが急速に高まっており、サプライチェーンを含めた透明性の確保が競争力の源泉となっています。
CFPプロジェクト ―現場起点によるデータ基盤構築―
本プロジェクトでは、単なる排出量の算定にとどまらず、原材料調達、生産、物流、使用、廃棄・リサイクルの各工程において排出源を可視化し、削減機会の特定に繋げることで、製品設計段階から環境負荷低減を織り込む設計起点の改善も可能となりました。
製品のライフサイクルにおいて排出されるCO2の量
また、本プロジェクトは形式的な算定業務に終わらせず、製品を構成する部品レベルまで遡ることで、現場主体の活動として推進されました。
- 約800品目に及ぶ部品の重量を一つひとつ実測し、一次データを取得
- 各部品を排出原単位(IDEAコード)と紐づけ、GHG排出量を算定
- 開発、製造、調達、物流、総務、マーケティング、企画など複数部門が連携し、データ精度を担保
なお、詳細な部品レベルでの把握にあたっては、標準化されていない情報の整理・精査に多くの工夫を要しました。こうしたプロセスを通じて、グループ横断で活用できるデータ基盤を構築し、他製品への横展開もスムーズに行える仕組みを整備しました。
図面や既存データのみでは把握しきれない実態に対し、多くの関係部門による協力のもと現場での実測・検証を行うことで、CFP算定を実現しました。
現場での実測・検証は、理論値とのギャップを埋め、より実態に即したデータ精度の向上に寄与しました。また、現場部門の参画により、環境配慮と生産性の両立に向けた具体的な改善活動が進展しています。
ACT Ecolabel取得 ―外部評価による価値可視化―
CFP算定で得られたデータを基盤として、ラボ機器の環境性能を評価する国際認証My Green Lab ACT Ecolabelを当社の超低温フリーザー27品番にて取得しました。
本認証は、製品のエネルギー使用、材料、廃棄性に加え、製造拠点や企業の環境取り組みを総合的に評価するものであり、近年では製薬企業における調達要件の一部として重要性が高まっています。
ACT Ecolabelは、製品ライフサイクル全体にわたる環境影響を多角的に評価する国際的な指標であり、第三者による客観的な評価を通じて、顧客に対する透明性と信頼性を高める役割を担っています。当社はCFPデータを基盤に、この評価プロセスに対応することで、環境性能を定量的に示す体制を確立しました。
超低温フリーザー
MDF-DU703VH-PA/PE
ACT登録商標はMy Green Lab, Inc.が所有・管理しています。
詳細はACTの公式ページをご覧ください。
これらの取り組みを通じて、従来は見えにくかった環境価値を定量データとして可視化し、顧客の調達基準やESG評価への対応力を高めています。特に欧米市場においては、環境性能が入札要件や購買意思決定に直接影響するケースが増えており、本取り組みは事業機会の拡大にも寄与しています。
今後の展開
本取り組みにより、以下の価値創出を実現しています。
- 製薬企業・研究機関におけるScope 3削減ニーズへの対応
- サステナブル調達基準への適合による採用機会の拡大
- ESG開示・評価(CDP等)における信頼性向上
- 高付加価値製品としての差別化及び価格競争力の強化
今後は、対象製品の拡大(CO2インキュベーター等)及びグループ全体への展開を進めるとともに、CFPデータを活用した製品改善及びACT Ecolabelスコアの向上を図り、製品価値と環境価値のさらなる向上を目指します。
さらに、取得したデータを活用し、製品間比較や改善シミュレーションを可能とすることで、継続的な環境性能向上サイクルの確立を目指します。将来的には、サーキュラーエコノミーも視野に入れ、製品ライフサイクル全体での価値創出を加速していきます。
さらなる向上を目指す
プロジェクトリーダーコメント
本取り組みでは、開発・調達・製造など部門を横断した製品ライフサイクルにおける排出量の把握と改善を進める基盤を構築しました。多くのメンバーの協力により得られたこの成果を出発点として、今後は環境配慮を製品設計や事業活動にさらに深く組み込み、資源循環の視点も取り入れながら、サーキュラーエコノミーの実現に挑戦していきます。環境価値の創出を新たな競争力へと変え、お客さまと社会から選ばれ続ける企業を目指して取り組みを進めてまいります。
牛久保 幸治
PHC株式会社
ライフサイエンス事業部 ESGリーダー