目次
標榜科目とは患者さんから選ばれるための第一歩
標榜科目とは、医療機関が専門とする分野を患者さんに伝えるために看板やホームページなどに掲げる診療科名のことです。
標榜科目をわかりやすく提示できれば、患者さんが自身の症状に適した医療機関を正しく選ぶことにもつながります。なお、麻酔科を除く診療科名は医師の専門性にかかわらず、標榜科目として掲げてよい自由度がある点はおさえておきましょう。
出典:厚生労働省「第8回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会資料1令和8年3月6 日睡眠障害の標榜についてP4」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001666443.pdf)
2026年6月に追加された「睡眠障害」の取り扱い
2026年6月施行の医療法施行令改正により、「睡眠障害」が新たに内科などの基本診療科目と組み合わせて標榜できる病態として追加されました。
出典:厚生労働省「標榜可能な診療科名に係る医療法施行令の改正について~組み合わせで標榜可能な事項に「睡眠障害」を追加~」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_73418.html)
厚生労働省の資料では、区分(d)患者の症状・疾患の名称に、感染症・腫瘍・糖尿病・アレルギー疾患に睡眠障害が加わる形で示されています。
出典:厚生労働省「第8回医道審議会医道分科会診療科名標榜部会資料1令和8年3月6 日睡眠障害の標榜についてP6」(https://www.mhlw.go.jp/content/10801000/001666443.pdf)
睡眠障害を標榜する場合の手続きについては、後述の「標榜科目を変更したいとき」をご参照ください。また、よくある質問の「睡眠障害を標榜するにはどうすればいい?」でも概要を解説しています。
標榜科目はどう決める?診療科名の標榜方法
標榜科目の決め方には、法令に基づいたルールがあります。単独で使える科目名・組み合わせのルール・標榜可能な科目の範囲を順に確認しましょう。
基本ルール
診療科目の標榜方法については、医療法施行令で定められた範囲内での選択が必要です。具体的には、以下4パターンのいずれかで決めることが定められています。
- 内科
- 外科
- 内科または外科と、特定の事項を組み合わせたもの
- 単独で標榜可能な名称(特定の事項との組み合わせも可)
「特定の事項」とは、医療法施行令で示されている以下を指します。
- 身体の部位・器官・臓器・組織やその機能
- 疾病・病態の名称(感染症、腫瘍、糖尿病、アレルギー疾患、睡眠障害など)
- 患者の特性(性別・年齢など)
- 医学的処置
標榜科目数に法令上の制限はありません。ただし、医療広告ガイドラインでは医師1人につき主たる診療科を原則2つ以内に留め、主たる診療科を他の診療科と区別して大きく表記することが望ましいとの見解を示しています。
出典:e-Gov法令検索「医療法施行令第三条の二」(https://laws.e-gov.go.jp/law/323CO0000000326)
出典:厚生労働省「令和8年3月30日最終改正医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)P14~17」(https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf)
診療科名の組み合わせルール
標榜科目を決める4パターンのうち、内科または外科と特定の事項を組み合わせる場合のルールは以下のとおりです。
| 事項 | 具体例 |
|---|---|
| a. 身体の部位・臓器等 | 頭頸部、胸部、腹部、呼吸器、消化器、循環器 など |
| b. 疾病・病態 | 感染症、腫瘍、糖尿病、アレルギー疾患、睡眠障害 |
| c. 患者の特性 | 性別、年齢 など |
| d. 医学的処置 | 整形、形成、心療、不妊治療、人工透析 など |
たとえば「感染症内科」「睡眠障害内科」のように、どのような診療を受けられるかがわかりやすく示される形が想定されています。
ただし、「整形内科」「心療外科」のように組み合わせが不合理な場合は標榜が認められません。また、異なる事項同士であれば「思春期心療内科」のように組み合わせられますが、同じ事項から複数の語句を組み合わせることは認められていません。例として「大腸肛門外科」は認められず、「大腸・肛門外科」のように事項を区切って標榜する必要があります。
なお、2026年6月施行の改正で追加された睡眠障害では「睡眠障害内科」のように内科と組み合わせた標榜が可能となっています。
出典:e-Gov法令検索「医療法施行令第三条の二」(https://laws.e-gov.go.jp/law/323CO0000000326)
標榜できない診療科名
法令上の根拠がない名称や、不合理な組み合わせとなる名称は標榜が認められていません。代表的なものを以下に示します。
【不合理な組み合わせとなる主な例】
| 診療科名 | 組み合わせが認められない事項の例 |
|---|---|
| 内科 | 整形、形成 |
| 外科 | 心療 |
| アレルギー科 | アレルギー疾患 |
| 小児科 | 小児、老人、老年、高齢者 |
| 皮膚科 | 呼吸器、消化器、循環器、脳神経 など |
| 泌尿器科 | 呼吸器、消化器、循環器、脳神経 など |
| 産婦人科 | 男性、小児、児童 |
| 眼科 | 胸部、腹部、呼吸器、消化器、循環器 など |
| 耳鼻いんこう科 | 胸部、腹部、消化器、循環器、肛門 など |
たとえば「小児科」に「老人」を組み合わせた「老人小児科」のような表記は、年齢区分が相反するため認められません。同様に、診療科ごとに組み合わせ不可とされる語句が定められています。
「ペインクリニック」「総合診療」など実際に提供している診療内容については、標榜科目とは別の形(ホームページの説明文など)で患者さんに伝えるのは可能です。標榜科目の看板表記とは区別して理解するとよいでしょう。
出典:医療法施行規則「第一条の九の四」(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80092000&dataType=0&pageNo=1)
標榜科目を変更したいとき
標榜科目を追加・変更・廃止する場合、変更後10日以内に管轄の保健所(または都道府県)に届け出る必要があります。以下に東京都を例とした手順を示します。
【手順の例:東京都の場合】
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① 変更内容の確認 | 追加・変更・廃止する診療科名が標榜可能かを確認 |
| ② 必要書類の準備 | 診療所開設(変更)届出書に変更後の標榜科目を記載 |
| ③ 保健所への届出 | 変更後 10 日以内に管轄保健所に届出書を提出 |
| ④ 受理確認 | 受理通知を受け取り完了 |
提出先や必要書類の詳細は各都道府県・保健所によって異なります。東京都以外の地域にお住まいの場合は、お住まいの都道府県や市区町村の保健所ウェブサイトで手続き方法をご確認ください。
なお、睡眠障害を新たに標榜する場合も、同様の変更届出が必要です。
出典:東京都保健医療局「【個人開設】診療所の開設届出事項の変更」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamafuchu/iryou/shinryojo_shika/shinryo_shika_henko/shinryojo_kojin_henko)
標榜科目と集患の関係性
標榜科目は、患者さんがクリニックを探す際の最初の判断材料です。地域のニーズと自院の強みが合致した診療科名を掲げることで、集患にも大きく影響します。
たとえば、高齢化が進む地域であれば循環器内科・整形外科など、子育て世帯が多いエリアであれば小児科・アレルギー科といった形で、地域特性を踏まえた標榜科目の設定が集患効果を左右するといえるでしょう。
自院に適した標榜科目を検討する際は、周辺エリアの年齢層や既存クリニックの標榜状況を調べる診療圏調査が手がかりになります。近隣にすでに同じ科目を掲げるクリニックが多い場合は、専門性を絞った組み合わせ科目を検討するなど、競合との差別化も選定の視点として有効です。
集患のための具体的な施策を確認いただけるコンテンツを集めました。参考になさってください。
標榜科目に関するよくある質問
ここからは、標榜科目の選定や規定についてよくある質問を解説します。
標榜できる科目数に上限はある?
法令上、標榜科目の数に明確な上限規定はありません。ただし、厚生労働省の医療広告ガイドラインでは、医師1人につき主たる診療科は原則2つ以内が望ましいとされています。
多数の科目を掲げると患者さんに専門性が伝わりにくくなる場合もあるため、自院の強みを踏まえた絞り込みが求められます。
出典:厚生労働省「令和8年3月30日最終改正医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)P16」(https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf)
睡眠障害を標榜するにはどうすればいい?
2026年6月以降、「睡眠障害」を内科などの基本診療科目と組み合わせて標榜できます。新たに睡眠障害を追加する場合は、変更後10日以内に管轄保健所へ変更届をご提出ください。また、主たる診療科は原則2つ以内という医療広告ガイドラインの指針にも留意しましょう。
出典:東京都保健医療局「【個人開設】診療所の開設届出事項の変更」(https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/shisetsu/jigyosyo/hokenjyo/tamafuchu/iryou/shinryojo_shika/shinryo_shika_henko/shinryojo_kojin_henko)
まとめ
標榜科目のルールは医療法施行令に基づいており、麻酔科を除けば医師免許があれば原則自由に選択できます。2026年6月には「睡眠障害」が新たに標榜可能な病態として追加されたため、対応を検討している場合は早めに保健所への届出準備を進めるとよいでしょう。
標榜科目は集患の入口にもなる要素です。自院の強みと地域ニーズを照らしあわせながら、最適な科目設定をご検討ください。
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