統合報告書 2025

Business糖尿病マネジメントドメイン

糖尿病マネジメントドメインは、グローバルに、糖尿病をお持ちの方が血糖の測定に使用する革新的な血糖自己測定システムを提供し、健康状態の改善と生活の質の向上に貢献します。ご自身で簡便・正確に血糖値を測定できるBGM(血糖値測定システム)の開発・製造・販売と、高精度なモニタリングを提供する世界初かつ唯一の1年間継続利用可能なCGM(持続血糖測定システム)の販売を行っています。

売上収益全社比率27.3%

FY24 実績

売上収益
売上収益

売上収益は、CGM新製品発売による増収や為替の好影響を受けるものの、BGM事業における米国での販売協業終了影響、欧州市場の縮小影響などにより前年比減収

  • 為替の好影響
  • 先進国におけるシェア獲得
  • CGMの販売増
  • 先進国における市場の縮小
  • 米国での販売協業の終了
  • 低価格チャネルへの移行
営業利益
営業利益

営業利益は、構造改革費用の減少及びCGMの利益改善はあるものの、BGMの減収影響に加え為替影響も含めたコスト増などにより前年比減益

  • 構造改革一時費用の減少
  • 一部の償却資産の償却終了に伴う減価償却費の減少
  • CGM事業の収益改善
  • 為替影響やインフレ影響による費用の増加
  • 販売チャネルミックス変化によるBGMセンサの利益率低下
営業利益率14.1%

ドメイン戦略

佐藤 浩一郎

佐藤 浩一郎

PHCホールディングス株式会社
代表取締役副社長/COO/CSO
糖尿病マネジメントドメイン長

収益性維持、改善

BGM:注力セグメント強化とコスト最適化による収益性改善

CGM:365日センサの販売強化

営業利益率改善幅:2.5%(FY24~FY27)

BGMとCGMの両方を提供し、多様なニーズに応える

糖尿病は、今日、世界的に最も憂慮すべき健康課題の一つです。世界の成人のうち9人に1人、約5億8,900万人が糖尿病に罹患していると推定されています※1

糖尿病マネジメントドメインでは、80年以上にわたり、患者さんがご自身の健康状態を把握し管理できるよう支援してきました。2016年にアセンシア ダイアベティスケアを設立して以降も、積み重ねた知識と技術を受け継ぎ、現在、私たちの製品は世界100以上の国と地域で利用されています。

また、私たちは、2つの主要な血糖の自己測定方式であるBGM(血糖値測定システム)とCGM(持続血糖測定システム)※2の両方を提供する数少ない事業体の一つです。

先進国市場では、CGMの需要が急速に拡大しています。CGMは血糖を継続的に測定する比較的新しい技術で、患者さんが自身の血糖の推移を簡単に把握できます。私たちは、パートナー企業のSenseonics社が開発した世界初の皮下埋め込み型センサを搭載したEversense®365を販売しています。従来のCGMシステムではセンサの交換が7~15日以内に必要な場合が多いところ、Eversense®365では、最長1年間の連続使用が可能です。こうしたイノベーションにより、糖尿病ケアの新たな可能性を切り拓いています。

一方、BGMは、簡便・正確に血糖値を測定でき、CGMと比較し経済的です。患者数の増加が予想される新興国市場では、BGMが血糖値管理の主要な手段です。また先進国市場でも、頻繁な測定を必要としない方やコストを重視する方から根強い需要があります。アセンシアが製造・販売するCONTOUR®シリーズは、正確性と使いやすさで世界的に高い評価を得ており、患者さんの主体的な管理を支えています。

私たちは、BGMとCGMの両システムを提供することで、糖尿病をお持ちの方の多様なニーズに応えるとともに、患者さんの自立的な糖尿病管理を支援します。また、医療従事者との連携を強化し、より質の高い糖尿病ケアの実現を目指します。これからも、糖尿病マネジメント事業のリーディングカンパニーとして、糖尿病をお持ちの方の生活の質(QOL)向上に尽力してまいります。

BGM事業

アセンシアダイアベティスケア

市場環境・見通し

BGM市場の推移
BGM市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • 測定頻度の高い患者は、主に成熟市場においてBGMからCGMに移行
  • 新興市場では、CGMよりもコスト効率の高いBGMも成長
今後の見通し
  • CGMの採用は続くものの、BGMの減少はより緩やかになる見込み
  • 高価格帯市場が縮小し低価格帯市場が成長すること、医療費抑制などによる価格圧力により、全体的に価格が下落する見込み

製品・サービス

CONTOUR®
当社のBGM CONTOUR®は、ご自身で簡便・正確に血糖値の測定が可能です。極めて高い精度と使いやすさで、糖尿病管理をサポートしています。 100以上の国と地域で製品を販売し、約1,000万人の患者さんに提供しています。
BGM市場の推移
BGM市場の推移

出所:自社調べ

戦略・目標

戦略
  • 収益性の高いセグメントに対してリソースを優先的に配分し、市場シェアの成長を促進
  • 高い投資利益率(ROI)が見込めるイニシアティブに選択的に投資
  • 利益率の低い市場での市場参入戦略を変更し、収益性を向上
  • 構造的コスト及びその他の運営費用の最適化を継続
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:-3.0%
主な要因:
  • 米国:販売協業終了による影響は終息
  • アルジェリア:FY25に現地生産を開始

事業戦略

佐藤 浩一郎

佐藤 浩一郎

PHCホールディングス株式会社
代表取締役副社長/COO/CSO
アセンシア ダイアベティスケア CEO・社長

当社は、BGM事業の収益性を維持しつつ、市場環境の変化に的確に対応する戦略を展開しています。先進国では、BGMが徐々にCGMに置き換わる状況を踏まえた上で、高い収益が期待されるセグメントに注力し、シェア向上に向けた投資を行ってまいります。先進国でも利益率の低い地域においては、効率性の向上と市場でのプレゼンス確保のため戦略を再構築しています。一方、新興国では、BGMは費用対効果が高く高精度で利用しやすい製品として、成長の余地を残しています。

BGM市場全体では縮小が見込まれるものの、売上の減少幅は緩やかになると予測しています。また、米国におけるOTC市場の成長や2025年度から再参入するアルジェリアでの現地生産がさらに後押しとなると考えています。投資はROI(投資利益率)の高い販売施策に集中させる一方で、組織運営に関わる経費は厳密に管理していきます。インフレと医療保険償還政策の変化による価格圧力がある中、堅実な基盤を維持することを目指し、2024年度から2027年度までの売上収益において、年平均成長率マイナス3.0%を目標としています。

現場/お客さまの声

糖尿病をお持ちの方が安心感と自信を持てるサポートを提供
コロンビアのボゴタにあるコンセントリクス社のカスタマーサポートセンターでは、Mayra Ojeda(マイラ・オヘダ)さん率いるチームが、アメリカ、カナダ、メキシコ、コロンビア、ブラジルに住む糖尿病をお持ちの方に対し、心を込めてサポートをしています。28名からなるこのチームは、電話、メール、チャット、ソーシャルメディアを通じて、アセンシアのBGMシステムCONTOUR®のユーザーから寄せられる質問や相談に対応しています。
ご高齢の方や、糖尿病と診断されたばかりの方からのお問い合わせが多く、彼らはシステムの扱いに戸惑い、何をどこから始めればいいのかわからないと感じています。そのため、チームは、BGMシステムの接続方法、メールの送り方、さらには血糖値の測定方法などを一つひとつ丁寧に説明しています。
はじめは、不安に感じている患者さんも多いですが、チームのサポートを通じて少しずつ自信を持てるようになります。「最初は自分にはできないと思っていても、電話で数分話すだけで、自分にもできるのだとわかり、ほっと安心されることがよくあります。」とマイラさんは語ります。
そうした体験を通じて、患者さんはBGMシステムCONTOUR®の正確さ、使いやすさ、信頼性の高さを実感しています。
別の方法で治療をしていた方や別ブランドの製品からBGMシステムCONTOUR®に切り替えた方にも、マイラさんのチームは温かくサポートします。このように、カスタマーサポートセンターのきめ細かなサポート力が、糖尿病をお持ちの方の安心感と、BGMシステムCONTOUR®の継続利用につながっています。

CGM事業※1

アセンシアダイアベティスケア

市場環境・見通し

CGM市場の推移
BGM市場の推移

出所:自社調べ

市場環境
  • 糖尿病をお持ちの方の増加に伴い、市場は拡大傾向
  • 欧米など先進国を中心にBGMからCGMへの移行が増加
今後の見通し
  • 各国の保険償還制度の広がりにより、患者負担が軽減、さらなる需要増となる見込み

製品・サービス

Eversense®
Eversense®365は皮下埋め込み型CGMで、世界初かつ唯一の1年間継続使用可能なセンサを採用しています。特許取得済みの光学式センサで持続的に血糖を測定し、センサの上に装着したワイヤレス送信機からスマートデバイスに転送します。送信機は生活シーンに合わせて簡単に着脱可能で、肌に優しい粘着素材を使用するなど、使いやすい仕様で糖尿病をお持ちの方のQOL改善に貢献します。
Eversense®

戦略・目標

戦略
  • 365日製品の特長を活用し、患者の認知度向上、処方者の採用、病院システムとの連携を推進
目標(FY24-FY27)
売上CAGR:112%

事業戦略

ブライアン・ハンセン

ブライアン・ハンセン

アセンシア ダイアベティスケア CGM事業部長

当社は、世界初かつ唯一の長期間装着可能なCGMシステムであるEversense®が糖尿病の血糖管理においてより選ばれる製品となることを目指すとともに、成長を追求していきます。Senseonics社が開発し、アセンシアが販売するEversense® CGMは、最長1年間の継続装着、着脱可能なトランスミッターといった競合優位性を活かした戦略を展開してまいります。さらに、保険償還の拡大、ユーザーの認知度向上、対象を絞った販促活動を通じより多くの医師にEversense®を処方いただけるよう取り組んでいます。

同時に、医療従事者や医療機関との連携を強化し、CGMのデータを臨床ケアに活用し、遠隔モニタリングによるリスクの高い糖尿病をお持ちの方のサポートを進めています。また、開発元のSenseonics社はEversense®と連動する自動インスリン投与システムの開発に向けた協業を推進しています。

現在市場に出ているCGM製品の中で、最も長期間使用可能な当社のEversense®365は、年1回のセンサ挿入で他にはない利便性をユーザーにもたらします。他デバイスと連携する糖尿病ケアへの需要の高まりを考慮し、2027年度までの売上収益において、年平均成長率112%を目指しています。

現場/お客さまの声

ジェイコブさんの体験談:自信を持って次世代を支援
CGMシステムEversense®365を使用し、1型糖尿病の子供たちを対象とした合宿プログラムを企画・運営しているジェイコブさんは、糖尿病管理において「負担の軽減」と「手軽さ」が、自身の健康はもとより、支援する子供たちのロールモデルとなる上でも、不可欠であると実感しています。
ジェイコブさんにとって、Eversense®365は、信頼性が高く革新的なソリューションです。センサを一度挿入することで1年間継続使用できるため、頻繁なセンサ交換が不要となり、日々の負担が軽減されます。また、ワイヤレス送信機は、合宿で運動する際にも快適で着脱も容易です。こうした機能が、糖尿病ケアに伴う日常的なストレスを緩和し時間と心の余裕をもたらすことで、彼は周囲の人々を力づけることに集中することができます。
「Eversense®365のおかげで、糖尿病管理がとてもシンプルになり、これまで以上にエネルギッシュで、自由な生活が送れるようになったと感じています。」とジェイコブさんは語っています。
Eversense®365は、ジェイコブさんのように自身の健康を管理しやすくするだけでなく、個々の生活の質も向上させ、糖尿病コミュニティにもポジティブな影響をもたらしています。
ジェイコブさん