PHCグループのサステナビリティ経営は、環境・社会・ガバナンスの課題にグローバルに取り組むものです。特に環境面では「気候変動への取り組み」「サーキュラーエコノミー社会の推進」「省資源化による環境への配慮」の3つのマテリアリティに重点を置き、グループ全体で取り組みを進めています。
気候変動への取り組み
PHCグループは、気候変動が事業活動及び社会に与える影響を真摯に受け止め、脱炭素社会の実現を重要な経営課題と位置付けています。当社は、2040年までにScope 1及びScope 2における温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル目標」を掲げ、積極的に取り組んでいます。
中期経営計画2027において、2030年度までにScope 1及びScope 2のGHG排出量を42%削減、Scope 3のGHG排出量を25%削減する目標を掲げています。2025年6月に、この指標においてScience Based Targets initiative(SBTi)より「1.5℃水準」の「Near-Term Science-Based Targets」の認定を取得しました。
この認定は、パリ協定が目指す「地球の気温上昇を産業革命前から1.5℃以下に抑える」という目標に基づき、科学的根拠に裏付けられた削減計画の妥当性が評価されたものです。
| Scope 1(直接排出) |
2030年度までに42%削減(2023年度基準) |
| Scope 2(間接排出) |
Scope 3 (Scope1・2以外の間接排出) |
2030年度までに25%削減(2023年度基準)
削減対象となる関連カテゴリー:
- カテゴリー1:購入した製品・サービス
- カテゴリー4:上流の輸送・流通
- カテゴリー6:出張
- カテゴリー11:販売製品の使用
- カテゴリー12:販売製品の廃棄
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基本的な考え方
当社グループは、気候変動が事業活動及び社会に与える影響を適切に把握し、事業の持続可能性の確保と持続可能な社会の実現への貢献のため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいたシナリオ分析とリスクと機会の特定及び評価を進めています。TCFD提言の中で推奨される4つの中核的要素である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」については次のとおり取り組みを進めています。
ガバナンスとリスク管理
PHCグループでは、気候変動に関連するリスクと機会を適切に管理し、持続可能な運営を推進するため、サステナビリティ専任部署を設置しています。この部署は、サステナビリティ委員会のもとで活動し、サステナビリティ戦略の策定とグループ全体の推進、リスク・機会の評価やモニタリングを担当しています。サステナビリティ委員会は、取締役会に定期的に報告を行い、気候変動対応の進捗状況を監督しています。
サステナビリティ推進体制については、第5章 Sustainability サステナビリティマネジメントをご覧ください。
戦略
PHCグループでは、経営戦略、人的資本戦略、そしてESG戦略を統合的に推進することで、持続可能な成長と長期的な企業価値の向上を目指しています。気候変動対策を重要な経営課題と位置付けKPIを掲げています。気候変動を「リスク」と「機会」の両面で捉えており、法令や規制の対応、お取引先さまなどからの要請に加え、環境配慮型の製品・サービスを通じた新たなビジネス機会を創出していけると考えています。
シナリオ分析においては、異なる気候変動の進行状況を想定した以下2つのシナリオを採用し、気候変動によるリスクと機会を網羅的に抽出しています。
| シナリオ |
名称 |
概要 |
| 1.5℃シナリオ |
SSP1-1.9 |
持続可能な発展を基盤とし、気温上昇を1.5℃以内に抑えるための気候政策を導入し、2050年にカーボンニュートラルを実現するシナリオ。 |
| NZE (Net Zero Emissions by 2050 Scenario) |
気温上昇を1.5℃以内に抑え、エネルギー関連の持続可能な開発目標を達成するシナリオ。 |
| 4℃シナリオ |
SSP5-8.5 |
化石燃料依存の経済発展が続き、気候政策が導入されず、2100年に気温上昇が4℃以上となるシナリオ。 |
| STEPS (Stated Policies Scenario) |
現行の政策公約に基づき、エネルギー起因の排出量が一部減少するものの、産業由来の排出量が現行水準にとどまるシナリオ。 |
これらのシナリオ分析を通じて抽出した物理リスク、移行リスク、及び機会について、短期(1年)、中期(2~5年)、長期(6年以上)の時間軸に基づき、定性的な評価及び財務的な影響度の評価を進めています。本分析の結果については、完了次第、適切な形で開示する予定です。
当社グループは、気候変動に関するリスクと機会を適切に管理し、中長期的な事業の持続可能性を確保するとともに、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを推進してまいります。今後も透明性を重視し、分析プロセスや結果に関する情報開示を継続して行ってまいります。
指標と目標
PHCグループは、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑える世界的な取り組みに貢献するため、次の目標を掲げ取り組んでいます。
2040年度 GHG排出量Scope 1+2:カーボンニュートラル
2030年度 GHG排出量Scope 1+2:42%削減(1.5℃目標/2023年度基準)
Scope 3:25%削減(1.5℃目標/2023年度基準)
サプライチェーンGHG削減の取り組み
PHCグループは中期経営計画2027において、事業基盤の構築と持続的成長の実現を掲げています。この計画の中で、診断・ライフサイエンス分野を軸とした成長を進めるとともに、省エネルギー活動や再生可能エネルギーの導入を加速させ、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを強化しています。
2023年度におけるPHCグループの温室効果ガス(GHG)排出量は、84.4万tCO2、そのうちScope 1とScope 2(マーケットベース)が全体の7%を占めています。当社グループはNear-term目標を達成するため、従来の省エネルギー活動に加え、再生可能エネルギーの導入やガソリン等燃料の使用量削減の施策を進め、2030年までにScope 1+2のGHG排出量を42%削減することを目指しています。
一方、Scope 3の排出量は当社グループ全体のGHG排出量の大部分を占めており、特に「カテゴリー1:購入した製品・サービス」「、カテゴリー4:上流の輸送・流通」、及び「カテゴリー11:販売製品の使用」が大きな排出源となっています。これらのカテゴリーにおける排出量削減を重点的に進めるとともに、自社起因の出張に係る排出量削減、サーキュラー社会への貢献に関連する「カテゴリー12:販売製品の廃棄」の削減にも取り組み、2030年までに25%削減することを目指します。
さらに、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減を推進すべく、仕入先やパートナー企業との連携強化に努めます。
PHCグループは、これらの取り組みを通じて、事業活動が環境に与える影響を最小限に抑え、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
PHCグループ サプライチェーンGHG排出量