統合報告書 2025

Our Value CreationPHCグループの価値貢献領域を
クローズアップ

PHCグループは、「モニタリング(予防・予後・管理)」「検査/診断/治療」「研究開発」の3つの価値貢献領域において、それぞれ、「適切な病状管理/疾患の早期発見」、「正確で迅速な検査/測定」、「研究現場、創薬の効率向上」を通じ、医療の質やアクセスの向上、費用対効果の改善に貢献しています。本ページでは、私たちが各領域でどのような価値を創出し、貢献しているのか、現場の従業員の声も交えながらご紹介します。

PHCグループの価値貢献領域をクローズアップ
モニタリング(予防・予後・管理)

健康診断支援サービス・遠隔医療システムの提供を通じた適切な病状管理と疾患の早期発見、糖尿病をお持ちの方の血糖管理により、医療アクセスの向上、費用対効果の改善に貢献しています。

ウェルネス(予防・未病)

ウィーメックス
Wemex 保健指導システム
ウィーメックスは、保健指導システムの提供を通じて、働く方やそのご家族、毎年約21万人の生活習慣の改善に寄与しています。
21
人/年

毎年約21万人の
生活習慣を改善

リアルタイム遠隔医療システム

ウィーメックス
Teladoc HEALTH
リアルタイム遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」は、医療アクセスの改善を図り、患者さんの早期受診・早期対応を促進し、迅速・適切な診療支援と、疾患の予防や重症化の防止に貢献します。
Teladoc HEALTH
国内の
29
都道府県

日本での発売開始から
3年間で29都道府県に導入
(2025年2月28日時点)

血糖自己測定システム(BGM/CGM)

アセンシア
血糖値測定(BGM)システム
持続血糖測定(CGM)システム
アセンシアが提供する血糖値測定(BGM)システムや持続血糖測定(CGM)システムは、糖尿病をお持ちの方の病状管理とより快適な生活を支えています。
血糖自己測定システム(BGM/CGM)
30
枚超/年

毎年30億枚を超える
センサが、アセンシアから
販売されています。

現場の声

アセンシア
糖尿病ケアにおける精緻な技術と糖尿病をお持ちの方への支援

クリニカルスペシャリストとして、10年以上にわたり糖尿病治療や患者サポートに従事し、医療現場での経験や糖尿病をお持ちの方への自己管理教育の知識を培ってきました。現在は、世界で唯一、1年間継続使用可能な持続血糖測定(CGM)システム「Eversense®365」を使用し始める際のサポートを担当しています。具体的には、このシステムの特長である高精度な測定で低血糖による誤検知がほぼ発生しないこと※1、センサを無駄にせず着脱できるトランスミッター※2、さらに肌に優しくトラブルもほとんど発生しないといったメリットを、患者さんや医療従事者が十分に理解し、活用できるよう支援しています。

Eversense®365の仕組み、センサ挿入手順の詳細、日常的なシステム管理方法、血糖データの読み取り方について、個々のユーザーに合わせた研修を企画・実施しています。また、研修の運営管理やデジタルツールの活用、患者さん向け資料の作成などにおいて、社内チームと連携し、システム導入プロセスが円滑かつ効果的に進むよう努めています。

Eversense®365は、精緻な技術に基づき、他の市場製品とは一線を画す存在です。

ミシェル・デ・ウィント

ミシェル・デ・ウィント
アセンシア
ダイアベティスケア
クリニカルスペシャリスト

わずかな停止時間で、1年間にわたり正確な血糖モニタリングを実現し、自信を持って自己管理できるため、長期的な安心感と生活の質の向上を提供します。さらに、本体のリアルタイム振動アラート機能により、スマートフォンが手元になくても高血糖や低血糖※1に迅速に対応できるようサポートします。皮下に挿入されたセンサは1年間継続使用可能※3であり、埋め込み型設計のため圧迫低値がほぼ発生せず、患者さんや医療従事者に一貫して信頼性の高いデータを提供します。
私は、臨床現場で得た知見や洞察を製品設計に活かしています。患者さんの声や自身の経験をもとに、安全性や使いやすさ、そして臨床ガイドラインとの整合性を重視した改善提案を行っています。また、こうした視点を通じて、技術的な革新だけでなく、糖尿病と日々向き合う人々の実体験に基づいたイノベーションを加速させることに取り組んでいます。
臨床の立場から、CGMシステムは革新的な技術だと考えています。患者さんが血糖の傾向を把握し、迅速かつ適切な判断を行うことで、重度低血糖など命に関わる事態を未然に防ぐ手助けとなります。さらに、タイムインレンジ※1や血糖変動の傾向を示すトレンド矢印などの実用的な指標によって、医療従事者が治療方針を的確に調整できるよう支援します。
今後、CGMシステムは完全なクローズドループ機能に近づきつつある自動インスリン投与システムを実現する上で重要な技術になると確信しています。個別化された精緻な糖尿病ケアの未来を切り拓く一助となることを目指し、私は、教育、技術、そして患者さんの体験を一体化させることで、より良い成果を導いていきたいと思います。
ミシェル・デ・ウィント
  • ※1 PCアイコンChristiansen, M. P., et al. (2018). A prospective multicenter evaluation of the accuracy of a novel implanted continuous glucose sensor: Precise II. Diabetes Technology & Therapeutics, 20(3), 197–206.
    https://doi.org/10.1089/dia.2017.0142.
  • ※2トランスミッターが取り外されている間は、グルコースデータは生成されません。
  • ※3 PCアイコンSenseonics. (2024) Eversense® 365 CGM System User Guide.
    https://www.eversensecgm.com/safety-information/
検査/診断/治療

臨床検査や診断機器の提供などによる正確で迅速な検査/測定を通して、医療の質の向上、費用対効果の改善に貢献。また、電子カルテ等の医療DXも推進しています。

臨床検査サービス

LSIメディエンス
臨床検査サービス
LSIメディエンスは、日本全国約7,000ヶ所の医療機関から検査を受託し、1日あたり約95万テストの検査に対応する体制を整え、医師の正確な診断をサポートしています。
12
検体/日

LSIメディエンスは、全国の病院や診療所から毎日12万件以上の検体を受け入れています。

診断機器

PHC IVD
移動式免疫発光測定装置 パスファースト
PHC IVDが提供する「パスファースト」は、全血及び血漿、血清での測定が可能。他項目の測定が同時にでき、最短17分で測定結果が得られるため、医療現場での迅速な検査に貢献しています。
移動式免疫発光測定装置 パスファースト
600
本/年

移動式免疫発光測定装置
「パスファースト」専用の試薬カートリッジの年間販売数量約600万本を積み重ねると120kmになります。

病理検査機器

エプレディア
デジタル病理
エプレディアが提供するデジタル病理機器は、高品質なデジタル画像へのスキャニングにより、モニターでの検体画像確認やAIの活用を可能とし、ワークフローの効率化に貢献しています。
デジタル病理

電子カルテシステム・レセプトコンピュータ・薬局向けシステム

ウィーメックス
Medicom クラウドカルテ
Medicom-HRf core
PharnesX-MX
Wemex 薬局経営支援
ウィーメックスが提供する電子カルテシステムやレセプトコンピュータ、薬局向けシステムは、医療機関・医療従事者の診療記録管理や事務作業をサポートしています。
5
軒超

全国の医療機関・薬局のうち、5万軒超がウィーメックスのレセコンユーザーです。これは日本の医療機関・薬局の5軒に1軒でウィーメックスが選ばれているということになります。

現場の声

ウィーメックス
お客さまに一番近い存在として、「信頼されるパートナー」であり続けたい

2011年にウィーメックスの前身である旧・株式会社メディコムソリューションに新卒で入社し、以来、湘南営業所でコーディネーター職に従事しています。コーディネーター職とは、ウィーメックスの電子カルテやレセプトコンピュータ(レセコン)を導入いただいているお客さまに対し、製品の納品業務や操作説明、アフターサービス、商品提案などを行う職種のことで、ウィーメックスの中でお客さまに一番近い存在であると感じています。と同時にお客さまから直にいただく貴重なお声を会社へフィードバックし、より良いサービスの提供や品質の向上へつなげていくことも大切な業務の1つであると日々実感しています。

私が働く湘南営業所では、神奈川県央・県西エリアと東京都町田市を担当し、コーディネーター職10名、営業職4名、事務職1名の計15名で、600軒ほどのお客さまの対応を行っています。多くのお客さまを担当しつつもどんな時も高水準のサービスや品質を提供できるように、私たちはさまざまな取り組みを行っています。

1つは、お客さまからのよくあるご質問を優先的に表示する「Q&Aサイト」の開設です。以前は、疑問や問題発生時にコーディネーターがお客さまを訪問して対応していましたが、現在は本サイトをご確認いただくことで、お客さまご自身でスピーディーな問題解決が可能になりました。これにより生まれた時間で、コーディネーターは、1軒1軒ゆとりを持った訪問活動や、自己研鑽の時間を増やし、お客さまの満足度向上につながる能動的な活動に注力できるようになりました。

大井 なつみ

大井 なつみ
ヘルスケアIT事業部
営業本部
首都圏営業部
湘南営業所

2つめは、顧客管理システムを活用したナレッジや最新情報の共有です。お客さまからいただいたお声や、現場での学び、対応法、ナレッジやケーススタディをこの顧客管理システムを通じて共有することで、特定の担当者に頼ることなく、スピーディーかつ正確に、トラブルや現場の困りごとの解決に導けるようになりました。さらに、湘南営業所の取り組みとして、2024年からコーディネーター職の「エリア制」を導入しました。これにより、属人的な業務の回避だけでなく、お客さまからのさまざまなご要望に対し、チーム全体での知見・知識を持ってスピーディーな対応が可能となっています。

※数人で1チームを組み、一定のエリアを担当する制度。担当エリアは定期的に変更し循環させている。

ウィーメックスがお客さまから選ばれる理由は、長い歴史とその過程で諸先輩方が培ってこられた「信頼」と、企業としての「安心感」にあると考えます。私たちは日々、お客さまの導入設備や機器の構成、診療フローや導線、スタッフの人数や患者さんの属性傾向などを把握し、より良い診療につながる提案と、それらを次に担当するチームにもしっかり引き継ぐようにしています。電話対応、対面やメールでのコミュニケーションの一つひとつを、常に「ウィーメックスの看板を背負っている」という意識を持って丁寧な対応を心がけています。
コーディネーターの役割は、「お客さまから信頼されるパートナー」であることだと自負しています。私たちコーディネーターが行う電子カルテやレセコンの運用面でのご提案や、機器の構成・設置のご提案次第で、お客さまである医療従事者の作業効率が向上し、その結果、患者さんが適切な診療や医療行為を受けられ、ひいては人々の健康維持・増進につながっていることを鑑みると、コーディネーターとして、「お客さまから信頼されるパートナー」であり続けることの重要性を再認識する日々です。
さまざまな対人サービスをAIが担う時代だからこそ、我々の強みである「信頼」と「安心感」を維持し、「お客さまから信頼されるパートナー」として、私たちコーディネーターは医療従事者や患者さんに付加価値を提供することで、豊かな社会づくりに貢献していきたいと思います。
大井 なつみ
研究開発

ライフサイエンス機器や病理学用消耗品の提供などによる研究現場、創薬の効率向上を通して、医療の質の向上と、費用対効果の改善に貢献しています。

非臨床試験・治験サービス

メディフォード
非臨床試験受託サービス
メディフォードは、世の中で手に入る医薬品に対して、その安全性と有効性を確認するためのさまざまな試験や分析を行っています。日本で承認される医薬品の約3割は、メディフォードの厳密な検査を通じて提供されています。
非臨床試験受託サービス
30
%

日本で承認される医薬品の約3割は、メディフォードの厳密な検査を通じて安全性と有効性が確認されています。

ライフサイエンス機器

PHCbi
超低温フリーザー
CO2インキュベーター
PHCbiが提供する超低温フリーザーやCO2インキュベーターは、日本国内でシェアNo.1、世界でNo.2の高品質な製品として研究・製造プロセスにおけるバリューチェーンの構築に貢献しています。
超低温フリーザーCO2インキュベーター
トップ
20
社すべて

PHCbiは、世界の製薬会社トップ20社すべてに信頼される、卓越した技術と製品を提供するパートナーです。

病理消耗品

エプレディア
スライドガラス
病理分野を支えるエプレディアのスライドガラスは、光学的に最高レベルの透明度を実現し、病理医の的確な診断をサポートしています。
スライドガラス
48
製品/秒

毎秒約48のエプレディア製品が、がんに立ち向かう研究所や医療施設で使用されています。

現場の声

エプレディア
確かな染色は確かな接着から

私はエプレディアで8年以上にわたり、イノベーションと精緻な技術を推進する役割を担ってきました。

戦略的オペレーション/トランスフォーメーション担当ディレクター及びポーツマス工場の副拠点長として、病理検査のワークフローを向上させる高性能な消耗品の設計、開発、量産対応などに取り組むグローバルな多分野のチームを率いています。私たちは、機械工学、化学、プロジェクト管理、検証と妥当性確認といった幅広い専門知識を活かし、臨床ニーズに応えるソリューションを提供し患者ケアの向上に貢献しています。

私たちのイノベーションで最も画期的なものの一つが高い接着性能を有するスライドガラスSuperFrost PLUSです。HE(ヘマトキシリン・エオジン)染色、特殊染色、免疫組織化学など、最も厳格な染色プロトコルにおいても組織切片がスライドガラスから剥がれることなくしっかりと固定化された状態を保てるよう、接着特性を強化しました。これは精緻な技術と安定した高い性能を常に追求するエプレディアの姿勢を体現しています。

フィリップ・キッド

フィリップ・キッド
戦略的オペレーション/
トランスフォーメーション担当
ディレクター、
ポーツマス工場副拠点長

このスライドガラスは、その高い信頼性から、医療従事者が臨床現場でのワークフローを効率化し、正確な診断を行えるように支援するとともに、研究者がデジタル病理、ホールスライドイメージング(WSI)、AIを活用した画像解析などで、より複雑な実験や発見に挑戦することを可能にします。接着技術を向上させることで、組織処理の信頼性を高めただけでなく、臨床医や研究者がより精緻で有意義な結果を達成できるよう後押ししています。こうした精緻な技術によるイノベーションは、「個別化医療」の進展を支援するだけでなく、医療と研究の新たな可能性にもつながると考えています。
このプロジェクトの成功は、エプレディアを象徴する「協調性」に支えられていたと考えています。研究開発、製造、規制対応、品質、臨床関連業務といった各部門の枠を超えたチームワークによって、当社が提供するすべての製品は革新的であるだけでなく、拡張性が高く、規制にも準拠しています。明確なコミュニケーション、各自の責任感、そして相互尊重が我々の活動の基盤であり、チームが目的意識を持って迅速に前進することを可能にしています。
今後は、AI、リアルタイム分析、自動化といった革新的な技術が、医療従事者の成果や患者さんの成果を向上させるための変革の機会をもたらすと考えています。これらの進歩は、同僚のほか、医療従事者や研究者といったお客さまの成果をさらに高める未来を実現する原動力となります。エプレディアでは、精緻な技術を革新し続けることに揺るぎない姿勢で取り組んでおり、一歩一歩の前進が、より個別化され、連携のとれたケアモデルの実現に貢献すると確信しています。
フィリップ・キッド

ライフサイエンス機器

PHCbi
ライブセル代謝分析装置
独自の高精度 In-Lineセンサにより、細胞の代謝を採取することなくリアルタイムかつ連続的に測定。がん研究や幹細胞などの研究を支援しています。
ライブセル代謝分析装置
自動培養装置
PHCbiの「自動培養装置」は、代謝変化を可視化するIn-Lineセンサの値に基づき、自動で培地を交換。細胞の培養環境を常に最適化し、製造プロセスのQCD改善に貢献します。

※現在開発中製品(2025年度上市予定)

自動培養装置

現場の声

PHC IVD×バイオメディカ

精緻な技術を創出する現場

私は、診断薬事業部で血糖値センサの技術開発に長く従事してきました。現在は、その技術を応用し、バイオセンサ開発部で細胞培養向けセンサの技術開発を主導しています。

バイオセンサ開発部では、30年以上にわたる血糖値測定センサの開発で培った精緻な技術を基盤に、細胞・遺伝子治療(CGT)分野における新たな価値創造に挑戦しています。高い精度と信頼性が求められる血糖値測定センサの技術は、PHCグループを支えるコア技術の一つです。そして、この技術を応用し、細胞培養中のグルコース消費量や乳酸生成量といった代謝データを、リアルタイムかつ連続的に測定可能な高精度「In-Lineモニタリング技術」を開発しました。本技術は、昨年9月にバイオメディカ事業部が発売したライブセル代謝分析装置「LiCellMo™(リセルモ)」に搭載されています。

「LiCellMo™」のセンサは、10日間にわたる連続測定を可能にするため、反応試薬が長期間安定して性能を維持することが求められます。そこで、反応試薬が培地に溶け出さないよう試薬を固定化し、さらに保護膜で覆うなどの工夫を施しています。また、電極上に配合された10種類以上の原材料は、それぞれが重要な役割を担い相互に作用し合うことで、安定的かつ高性能な測定を実現しています。

山西 永吏子

山西 永吏子
PHC株式会社
バイオメディカ事業部
バイオセンサ開発部 部長

試薬全体の絶妙なバランスを保つためには、各原材料のばらつきや全体への影響度を設計段階で正確に把握・管理し、それを製造仕様に反映させることが極めて重要です。センサの開発には、モノづくりと一体となった取り組みが不可欠であり、その開発プロセスの考え方は血糖センサ開発から受け継がれています。
PHCグループが有する精緻な技術力は、患者さんに新たな治療の選択肢を提供するための重要な礎です。バイオセンサ開発部は、これらの技術をさらに発展させることで、製薬会社や研究者が直面する課題に応えるソリューションを提供し、治療が困難な疾患を抱える患者さんに希望を届けることを目指しています。今後も挑戦を重ね、患者さんや社会に貢献する革新的なソリューションの提供を推進してまいります。
山西 永吏子